第25回 また行きたい店。そんな店になりたい!

また行きたい店。そんな店になりたい! 


~あの人にまた会いたい。そんな人がいる店になる。その様な人間関係が商いの原点です~

■「昔はえらく繁盛していたのに~」と思い出す店があなたの周辺にもあるはず。
「そう言えばあの店は地味やけど長年、しっかり経営しとるなぁ」という店もあります。
この様に、商店は栄枯盛衰の中で頑張っています。

お役に立ったでしょうか、今回の連載。お店によっては「あまり役には~」だったかも知れません。
その点、お詫び致します。ともかく今回で一区切りです。有り難うございました。

データシステムさんの貴重なホームページの一部を担当させて戴き、商店経営に少しでもお役に立てばと、25回にわたり書かせて戴きました。
テーマは今の時代、商店経営の課題は多かったので、迷ったのですが、「いま現在、筆者の周辺で現実に起きている課題」を中心に書かせて戴きました。
ですから、教科書的な各編の構成になっていなかったと思います。この点も、お許しいただきたく思います。


オリンピックが終わりました。
あちこちの店主さんも、「オリンピック疲れですわ!」と寝不足の目をしょぼしょぼさせながらも、結構楽しんでおられた10数日だったようです。

とりわけ男子柔道や女子サッカーなどは、過去の戦い方を研究され苦戦していました。
これは商いの世界でも同じですね。「いい品」「いいサービス」「どこよりも安い」といった「必勝のウリ」は他に研究され、それ以上の商いが現れて苦戦を強いられます。

反面、そうした競争が、品揃えやサービス改善に繋がり、ひいては業界の発展・向上に繋がるのです。
ともかく、同じ戦法で同じ商いをしていては競争に勝てない時代ですね。

■オリンピックでの女子バレーボール、韓国戦でナゼ迫田選手を起用して成功したか?
監督は「データを見て起用した」と言っています。
同様に、商店経営でもデータを活かす経営とカンを活かす経営のミックスが大事です。
今日の中小店経営は両方を活かさねば生き残れない様です。 

マスコミ報道で皆さんもご承知の様に、今までの対韓国戦の実績では、迫田選手のアタックが一番有効だった、というデータがあった様ですね。
カン以上に、データは迫田選手が韓国戦に強い、ということを示していた様です。

しかし、データは活用しなければ意味がありません。
「何がよく売れているか?」と売場の担当者に聞くと、「よく売れている商品は○○!」と言い当てます。
しかし、売れ数は一日何個?とか、一週間で何個?とか聞きますと分からない事が多いのが普通です。
しかしレジスターやPOSシステムを使えば、簡単に、「何々が何個売れた」と正確に知ることができます。

さらに大事なことは、「何々が何個売れた」という結果の把握以上に大事な事は、今後の予測です。
・ 売れる時機の終わりはいつ頃か?
・ それまでに何個売れそうか?
・ 最終在庫を○○個と予測すると、それまでに何個くらい仕入れが必要か?
といったコトを予測することが大事なのです。

「商いは需要の創造である」と米国・経営学のドラッカー博士が言っておられますが、一面では、「商いは需要の想像である」とも言えます。
その、想像・予測は人間の頭脳とコンピューターのコラボレーションから生まれます。
そのコンピューターは、中小店では、レジであったりPOSシステムだったりするわけですね。

コンピューターは難しい,と言う人もいますが、車の運転と同じです。
自分でやるばかりでなく、誰かに任せるという方法もあるわけです。
勿論、自分が使えればいいわけです。しかし、我が子や若手社員に教えを請うのは、沽券(こけん)に関わる気もします。
そこで、操作を習うより、活かし方を習う方が効果的ですし早いと思います。
操作は自分でできなくても、「こういうデータを出してくれ」,と言えればいいのです。
ただし、能力不足のパソコン使い手は「出来ない」というコトが多いですから、「こういうデータと,こういうデータを組み合わせれば、こういう答え(データ)が出る」,と言うことは知っておいた方が良いと思います。
これはパソコン能力ではなく、それ以前の「計数管理能力」の問題なのですから。

八百屋のD君がダイコンを1,000本発注し、1回目の300本が入荷したとき、家族みんなから非難されました。
「多すぎる!」
「こんなに売れると思うのか!」
「ええ加減にせい!」
D君は内心ためらいはありましたが、外見は平気を装っていました。
昨年、一昨年の仕入れ数を仕入れ伝票で調べていたのです。過去、2年とも800本近く仕入れていたのです。
その都度仕入れていましたから、無難でしたが利益は限られていました。そこで今年は計画発注して安く仕入れることにしたのです。
「都度仕入れ」に較べて、「計画発注・まとめ買い」は、かなり安くなりました。

これは「期間内の売れ数把握」から得た効果でした。換言しますと「商いの成果はは売れ数の把握にあり」とも、言えるのです。
具体的に言いますと、
・ よく売れる時期に
・ よく売れる商品を
・ よく売れる価格で
・ よく売れる数、仕入れする
これが「よく売り、よく稼ぐ条件」なのです。

■データをよく読み、我が店の破綻を回避した砂糖屋。
経営は甘く?なかったが先を読み、時流に合わせた経営で成功。あなたの身近にもこんな事例は沢山あるはずです。

経営診断の依頼を受け、その砂糖屋さんに行ったとき、「これはなんや?」と思いました。
失礼ながら、今どき、砂糖屋の経営は難しいのは当たり前、店は暗い空気に満ちていて、死んだ様な店内、という予想をもって訪れたのですから。

ところが意外にも、店内に入ると活気を感じるのです。いささかくたびれた店舗外観に較べ、店内の人間が醸し出す雰囲気が全く違うのです。
「銀行から○千万円の借入をしたいので、経営診断をお願いします」
恐らく、売れ行き不振による資金不足なのだろう、と勝手に思いながら決算書を拝見すると、なんと、健全な経営状況なのです。
そこで「なんやこれは?」となったのです。

聞いてみますと、砂糖を専門に売っていたこの店は10年くらい前から、ピンチの連続でした。
まず、箱入り砂糖が売れなくなっていました。それまでは贈答や葬儀のお返しには、箱入り砂糖が主役でした。
特に、「お返しには箱入り砂糖」~。これがこの地方の常識でした。景気の好不調に関係なく葬式はありますから、一応、経営は順調だったのです。

ところが、消費の変化から「お返しが砂糖ばかりじゃ~」ということになり、「何でも買える商店街の商品券」がいい、という声に応えて商店街の商品券に変えました。
しかし、これも利益が少ない上に「商店街では買いたい商品がない」と苦情が出始め、扱いが減りました。

次に「大手百貨店や有名専門店で使える商品券」にしました。
ますます、利益率が低くなりました。その上、有名専門店も低迷し始め、百貨店も買い物がしづらいというお客の声が出てきました。

「どこでも使えるギフトカードがいい」というお客の声が大きくなってきました。
「もう、ウチのような元・砂糖屋がギフト業界で生き残って行けない時代なのか。もう、商いをやめる潮時かな?」
こんな心境になったようですが、最後の挑戦を!と考え、大手クレジット会社に取引依頼に行ったのです。
クレジット会社はいい返事をくれません。前から取引のある百貨店や専門店との兼ね合いもあるのでしょう。何度行っても重い返事でした。

JRの特急で往復5時間くらい掛かるクレジットの本社に、約3ヶ月間に、7~8回行ったでしょうか。
クレジット会社で元・砂糖屋の主人は熱弁をふるいました。

「大手企業は日曜、祭日、夜間は休みでしょうが、ウチは365日、24時間営業をします」。
「ウチの地方で、年間利用される葬儀のお返し額は○○億円と聞きます。その半分を貴社のギフトカードでカバーする決意です。
ウチの過去の実績はお届けした資料のように、当地方では上位であると思います。担当しました葬儀シェアは当地で上位と思っております」。
「葬儀やご依頼のご連絡があれば、深夜、休日を問わず、一時間以内に、お返し用の箱詰めギフトカードを、当面の見込み数を持って参上します。
それぞれの集落の習慣は知っていますから、2千円詰め○○個、3千円詰め○○個と万全の準備してゆきます」。
「弔いが一応終わったあと、もしカードが余った場合は、もちろん返却OKです。
こうした、いわば有価証券の委託サービス的なことは、銀行など大手企業などでは出来にくいと思います。
個人経営の当店だからこそ出来るサービスだと思います。これで市場の50%以上を確保する決意です。ぜひ貴社のカードを扱わせて下さい!」

これでココロが動かぬ売り手はいないでしょう。
そのクレジット会社との契約がすぐ出来ました。必殺?の提案が功を奏したのです。
いま、業績は順調に推移していて、2千円と3千円の箱詰めギフトカードを、常時○千万円分、準備しておく必要に迫られて、その資金の借入を計画したのです。

砂糖屋のままでしたら、もう、終わっていたかも知れない企業寿命だと思います。
それが「ウチは砂糖屋でなくギフト屋(お返しモノ屋)」と自店の位置づけを見直したのが良かったと思います。
いわゆる「業種発想」から「業態発想」への切り替えがよかったのです。

この元・砂糖屋の社長はこう言いました。
「この10年間でお客様の消費行動の読み方、時流の読み方、業態変化の読み方などを学びました」
「次はどうなるか?どう展開するか?読むのが楽しみになりました」
「他人さんより、悩んだ分だけ、多少苦労した分だけ、先を読むことの大事さ、仕入れ先の説得の重要さなど、学ぶことが出来ました。次の変化が楽しみです」 

■商いのあり方が難しい時代です。しかし、「この店は最高にいい。生涯、来続けたい!」、と思える店がどれくらいありますか。
少ないかも知れませんが、少ないからこそ、自店がチャレンジ出来るチャンスがあるわけです。

近代小売業の偉大な指導者・故倉本長治先生の言葉が今に輝きます。
「店はお客様の為にある」。
そうです。お客様の為に!という思いがある店、志の強い店にお客様はご来店になるのです。
しかし、実行は容易ではありません。日々、時々刻々、お客様のニーズは変わります。その変わるニーズに応え続ける店にお客様は来て下さるのです。

昨日、喜ばれたサービスが今日も喜ばれるとは限りません。だから商いは面白いのかも知れません。
零細店でも大手に勝てるチャンスがあるのは、正解が固定的、限定的でないからです。

アメリカ・サンフランシスコにある百貨店の最上階のフードコートでの経験です。
仲間数名と大きな店内を見て歩き、少し疲れたので「まずは一休み」と、あるカフェ・コーナーに立ち寄りました。
まずは普通のウエートレスのサービスでした。
ただ、不思議なことに、注文した半分しかコーヒーが来ないのです。「早く頼みますよ!」、と下手な英語で頼みました。

しばらくすると先のウエートレスが、全員分のコーヒーとケーキを持ってくるのです。
「ケーキは頼んでいませんよ!」というと、
「いえ、私の手落ちで遅くなりましたので、お詫びに皆さんにケーキを召し上がって戴きたく…」というのです。

「これは有り難い。今後もミスって貰った方がトクだね」、などと冗談を言いながら、念のために聞いてみました。
「私たちは、日本で小売店をしています。関心があるのでお聞きしますが、このケーキのサービスをするのに、あなたは誰の許可を貰うのですか?」
「許可?ノーです。お客様にお詫びのサービスをするのに誰の許可が要りますか?
私の判断です。当店ではお客様へのサービスについては、その時、これがベスト!と思うサービスを自分の考えで行うことが求められているのです」

この店の名前は、ご存じの方も多い「ノードストローム百貨店」です。
いまさら、ノードストロームでもあるまい、と言われるかも知れませんが、今なお、アメリカ小売業界ではノードストロームのサービスの評価は下がってはいません。

次にご紹介するのは、ノードストロームが店員に持たせる「サービス信条」の一部分です。

■ノードストロームの規則はこうです。
■ルール1:どのような場面でも、有効な判断力を活かしてください。それ以外の規則はありません。

原語では
Nordstrom Rules: Rule #1: Use good judgment in all situations. There will be no additional rules.

これで、お分かりのように、ノードストロームには画一的な規則はないのです。
商いは「ケースバイケース」「臨機応変」の営みだからです。
換言すれば、「マニュアル通り」、というのは最悪の対応なのです。お客様すべて同じ好み、同じ性格、同じ人柄という条件設定しているのがマニュアルです。
アメリカの商店の中で、筆者が特に好きなノードストローム。何度も買い物や見学、教えを請いに通った店です。

人それぞれの好みがありますから、こんなノードストロームにも不満を言う人もいますが、私は好きな店です。
画一的でない点が好きです。またいつも店内でピアノ演奏をしていて、こころを癒してくれるのも好きです。
日本人の我々が店に来たと知ると、「♪海は広いな大きいな」とか「♪上を向いて歩こう」など日本の曲を演奏してくれます。
もちろんパートの方(引退したプロ)の演奏ですが、演奏者が自分の考えで選曲しているのですから、実に素晴らしいです。

 
最終回に、こんな事を書くのは、こんな思いがあるからです。
「商いは損得を離れることは出来ませんが、商いの基本は人と人の関わり合い、こころとココロの交流が起点である」と思うからです。

好きな店について、お客様がよく言われる言葉~。
・あの店に、また行きたい!
・あの店の、生涯のお得意客になりたい!
・あの店の、あの販売員からまた買いたい!
・あの店は、齢をとったら毎日遊びに行きたい!
・あの店に、元気を貰いに行きたい!

この様に、「いい店」は商品だけでなく、「生き甲斐や歓び」をも売っているのです。
さあ、お互いさま、「いい商品を売る」のは勿論ですが、さらに「世の中や人々に、生きる歓びや元気を売る」ように、なりたいですね。


<シモナカ的用語解説>
 【レジスターやPOSシステム】=言うまでもなく、カネだけでなく情報も計算出来るレジや今の売れ行きは勿論、将来の予測も出来るシステムがあるのです
 【沽券(こけん)に関わる】=分かり易く言いますと「プライドに関わる」、と言うことです
 【能力不足のパソコン名手】=技術屋であるが技術者でない人です
 【どこでも使えるギフトカード】=例えばJCBやかつてのVISAなどのギフトカードのことです
 【有価証券の委託サービス的なこと】=商品券を使うだけ使って、残ったら返してくれればいい、という仕組み
 【「業種発想」から「業態発想」】=例えば、砂糖というモノを売る店は経営が厳しくなり、業種店としては無くなるかも知れません。しかし、ギフト用品を売る店は時代に合わせた商品を扱う限りまだまだ売れる訳です。即ちギフトという業態ならまだまだ健在なのです

筆者 下中ノボル (しもなかのぼる) プロフィール


*「店・企業は客の為にあり」が生涯の経営信条。(「商業界」理念)
*規模の大小を問わず企業生き残りの条件は「時流適応」と「顧客創造」。
*商業者に具体的アドバイスをする中小企業診断士。
*経営誌「商業界」、「2020AIM」などに執筆、他に著書多冊。
*中小企業経営大学校や各地商工会議所などの講師や専門委員を務める。
*専門課題は時流適応の商店経営戦略、マーケティング戦略など。

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