第24回 商いは今?齢をとった人の暮らし、分かりますか。

商いは今?齢をとった人の暮らし、分かりますか。

~時代は変わる。「モノ売り」から「コト売り」へ。そして「シーン売り」へ~

■大家族だった山田さんチも、息子二人が独立して一家を構えています。
山田さん夫婦は2人暮らしになり、食べ物、使うモノ、その生活シーンの全てが変わりました。
例えば、カボチャは4分の1あれば間に合います。徳用パックを買っていた漬物やお菓子も小さな袋で充分です。

「なんといいますか、抜け殻のような気分、祭りの後の感じですね」。
72才になった山田さんは言います。
「これはお客様の家でも同じでしょう。我が店では少量パックや野菜、果物などの2分の1カットや3分の1カットを増やしています。
まあ、息子や孫がやってくれている訳ですが~」
「以前、これからの商いは“モノからコトへ”と変えなさい、と教えられまして“食材売りからおかず売り”に変えてきました。
それが、今では“どんな場面・シーンで食べて戴くか”という考えで商いをしています。

例えば“鍋もの”の場合、寄せ鍋やもつ鍋、湯豆腐にしても今は“一人鍋”が少なくありません。
大勢の家族で鍋を囲んだのはかつての話。いまは“一人鍋”や“二人鍋”を如何に美味しく食べて戴くか、が商いのテーマです。
“一人鍋用の鍋”も売っています。切ないですがこれが現実です…」

「いやー、他人事ではありませんで。どこのウチもそうなるのですよ」。
幼なじみの、細々(失礼?)とギフト雑貨屋を営む久米田さんが言いました。
「ウチはギフト屋と言っていますが、実態は“お返しもの屋”です。お見舞い、新築、改装、出産祝いなどのお返しものです。
見栄えばかり考えて、大きくて安い商品を選ぶお客様に、小さくても日々の暮らしに役立つものの方が喜ばれますよ、とアドバイスしています。
どこのお家にもお返しに貰った、役に立たない品が沢山あるでしょう。邪魔になるばかりですよね。

ウチの商いは、実にちっぽけな商いですが、贈り主に“感謝の思いがこもったお返し”が届く様にやっています。
特にのし紙に書く字にこだわっています。家内が習字の先生をしていますので、書道の作品の様に“念い”(おもい)を込めて書いています」
「筆文字に興味のないお客様が多いですが、時々、“この字はどなたが書かれたのですか”と聞いてくれるお客様もいまして家内はその言葉を励みに老腕?に鞭打って頑張っています」。

ギフト屋久米田さんの自慢話です。

■「カラオケ喫茶と聞いてどんな店を想像しますか。シニア世代のお客同士が、楽しく歌って時間を過ごせる場所です」。
約8人で満員になる小さなカラオケ喫茶の店主・鳴海さんはこう言います。それと古いカセットデッキの修理も取り次ぐと言います。
「カセットデッキを、もう作らない、とメーカーが言っているそうですが」と不安そうに言うお客に適切な助言をしているようです。

「この喫茶店で、コーヒーを飲んで一休みしようと思って来たのに、カラオケで歌っているので(うるさくて)休まらないね」。
一弦客(いちげんきゃく)はそう言います。
そういうお客様に鳴海マスターは「済みません。いまはこんな喫茶店になっていますので宜しくお願い致します」と謝っています。
「それに、看板にカラオケ喫茶と書いているのですが……」。いわゆる昔風の喫茶店経営は、地方の小さな店では難しくなっているのです。

お客様は足腰に痛みを持つ人が多いのが昨今の特徴です。高齢客だからです。そうかといってお客様は自宅でボーッとしてはいません。
人恋しくて行く店が、元・喫茶店を改装したカラオケ喫茶店なのです。
1曲100円。これにコーヒー代を入れても1、000円までで過ごせる場所なのです。
基本的に歩いて来店できる範囲を商圏?と考えていますが、ぜひとも、と言うお客はマイカー送迎をするようです。(ただし一定の条件あり、ですが)

話は変わって。
70年代の青年達はカセットテープ世代です。CDは使いますがテープの方になじみがあります。
カセットデッキの修理屋さんの広告を見ますと成る程と思えるコトが書いてあります。


・製造から数十年?経っている機器は修理をしても新品当時の性能には戻りません。
・お問い合わせをいただいても、お客様のお人柄を見て(感じて)修理をお受けするかしないかを判断しますのでご承知下さい。特に横柄な方や神経質そうな方には返事も致しませんのでご承知下さい。
・やりとりの記録が残る、パソコンやケイタイのメールが使える方のみ修理をお受けしております。

この様に元・青年にはカセットデッキの修理環境も、極めてハードルが高いという事になりつつあるようです。
「店はお客様の為にあり」という哲学がありますが、無条件でお客様の言いなりにはなりません、という信念もあるのですね。

「まんが喫茶」とか「コミック喫茶」「インターネット・カフェ」などがありますが、これは主に若い人が時間を過ごすところです。
これに対して近隣の高齢徒歩客の「介護型?カフェ」がカラオケ喫茶なのです。
こういう表現、怒られるかも知れませんが、実態はほぼそう言うことです。

町のカラオケ喫茶。いまご紹介した視点から見て下さい。
見るアングルを変えれば町の交流ポイントとして理解できます。健康な老人のセルフ介護施設なのです。

■「開いててよかったセブン・イレブン~」の時代は、遅くまで開いていることに価値がありました。
いまは開いているのが当たり前になりました。そして昨今は、高齢者向きのコンビニが出来る時代になりました。
サービスは時代と共に変わるのです。変えてはならないのは顧客第一の精神だけです。

『女性や高齢のお客さまの支持を高めるため、「ローソン」に生鮮食品や日配食品を品揃えしました。生鮮強化型ローソンの出店を進めました。また、生鮮コンビニエンスストア「ローソンストア100」の出店も推進しました』

これは最近のローソンのホームページに出ている新浪社長のコメントです。

女性や高齢者を主力客にしたコンビニの一号店を兵庫県淡路市に出店したのです。うまく行きそうなら今後、全国的に広げて行きたいと言う事です。

高齢者への対応を中小店に任せておけない、という事でしょうか。中小店は負けてはおれないですね。
高齢のお客様を自分の親と思って親切に対応する、これが大事でしょう。

ローソンの高齢者対応コンビニの特徴を挙げてみます。

・店内通路が広くショッピング・カートが使える
・休憩スペースが充分にとってあり、休憩スペースにはテーブルだけでなくマッサージ・チェアもある
・地元の野菜が品揃えされている
・白髪染め、老眼鏡、名画DVD、など高齢者向きの品揃えがある
・店舗の色は今までのローソン・ブルー調からブラウン調に

うまく行けば今後3年簡に全国のローソン約8,300店の2割位をこの「高齢者向きコンビニ」にしたいと言う事です。

ともかく「うまく行ったら」という条件つきですが、地元の中小店は、この店の狙いをよく理解しておき、十分な対応が要ると思います。
基本的な狙いは、行動が若いときに較べ、限定的になった高齢者への生活サポートです。 
システムや仕組み以前に店の人の「思いやり」が勝敗の決め手になると思います。

大きい企業に負ける、価格競争に負ける、という考えにも一理ありますが、高齢客が何より重視しているのは、「自分への親切心」です。
規模の大小でもなく多少の価格差では無いはずです。

 

ここで、ある高齢客・近藤さんが、「今後はこの店、この店長に頼む事に決めた!」と思った事例をご紹介します。
ある地方クリーニング店のことです。
近藤さんはフードつきのコートをクリーニング店に出しました。ところが、返って来たコートにフードが付いていません。
「フードが返って来ていなんやがどうなりますか?」
怒鳴りたいところを我慢して電話しました。
「済みません。早速、工場や倉庫を確認します。コートに付いている番号札の番号などお聞きして宜しいですか?」
店の責任者永森さんが恐縮しながら聞きます。
ただ、やりとりしながら、近藤さんの脳裏をかすめる不安がありました。フードは出さなかったかも知れない……。
「私が責任持ってお調べしてご連絡致しますので、しばらく時間を下さい!」
永森さんの声には、責任者としての毅然とした雰囲気がありました。
「こうまで言ってくれ、行動して呉れるならフードが返ってこなくてもいいか……」と永森さんが思いました。

それはほかのクリーニング店で紛失したニットのベストの経験があったからです。
そのクリーニング店では、こちらの説明を聞き終わらない時点で、その店の担当者が「私は絶対、預かっていません」と言い張った経験があるからです。

そのクリーニング店で、その時、カウンターが混んでいたのでベストを預け、あとで伝票を貰いに来る、と言って貰いに行かなかった記憶のある品物でした。
京都駅ビル地下街で買った高価なベストはあれ以来、影も形もありません。

その時の応対に較べれば、この店の永森さんの応対は「返ってこなくても、ここまで対応して貰えれば不満なし」だったのです。
「申しわけありませんが、いまのところ、どうしても行方が判りません。探し続けてみますが……」、永森さんのお詫びの電話です。
この時、「今後、私はこのクリーニング店の生涯の顧客になることに決めた」
と、近藤さんは言います。

後日談があります。そのフードが近藤さん宅にあったのです。

「齢をとると子供みたいになる」、とよく言いますがその通りです。
齢をとると自分に優しい人、こころを向けてくれる店だけが好きになる人が増えます。
「齢をとると人間は円くなる」と言いますが、私は間違いだと思います。
齢をとったために面倒くさい事がイヤになっただけだと思います。
高齢者は円熟した人物でもありますが、一方、子供のように単純な発想する「オールド・チャイルド」になる年頃でもあります。
こんな生活シーンに合わせた商いで、今までと違うお客様、商いづくりが出来ると思います。さあ、挑戦です!時は今です!


<シモナカ的用語解説>
【たかが店頭商品】=店頭商品、特価商品。多くは魅力ない商品が多い。「これぞ店頭商品」を期待します
 【“モノからコトへ”】=食材そのモノを売るのでなく、お客様の齢や健康に合わせたおかずを提供すること
 【カラオケ喫茶】=この場合は、町の小さな喫茶店がカラオケが歌えるように機能を変更した店
 【「まんが喫茶」「コミック喫茶」「インターネット・カフェ」】=まんが喫茶もコミック喫茶も意味は同じです。コミック誌などが沢山品揃えされています。インターネット・カフェも機能的には同じです。休憩・宿泊可能なスペースを持ったカラオケ店であったりゲームが楽しめるところです。どちらも注文次第で軽食やインターネットが頼めます
 【健康な老人のセルフ介護施設】=体は丈夫だがココロが寂しい、という人の休息所です
 【開いててよかったセブン・イレブン~】=日本では昭和40年代にセブン・イレブンが創業。商店が夕方6時頃閉店していたので11時まで店を開いていることに価値があった。「開いててよかった」とお客が思った頃の話
 【ローソン約8,300店の2割位をこの「高齢者向きコンビニ」にする】=実験がうまく行ったら、の話。3年間に約2、000店がこの高齢者対応のコンビニに変わる、という話
 【単純な発想する年頃?のオールド・チャイルド】=老練で我慢強い筈が「我慢できない、誰それの様にして」、とねだり始める老小児。

筆者 下中ノボル (しもなかのぼる) プロフィール


*「店・企業は客の為にあり」が生涯の経営信条。(「商業界」理念)
*規模の大小を問わず企業生き残りの条件は「時流適応」と「顧客創造」。
*商業者に具体的アドバイスをする中小企業診断士。
*経営誌「商業界」、「2020AIM」などに執筆、他に著書多冊。
*中小企業経営大学校や各地商工会議所などの講師や専門委員を務める。
*専門課題は時流適応の商店経営戦略、マーケティング戦略など。

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