第16回 店はお客様と従業員で繁栄する!

店はお客様と従業員で繁栄する!


~教えた以上に育てよ。育ててナンボ。繁盛の元は育てにあり~

■従業員育成のコツ。まず「考え方とやり方」を覚えさせよ。
次に頭と体で覚えさせる「枠ハメ」訓練。後は自分流にやれ!

家族3人、従業員2人、計5人の八百屋。場所は地域の郊外型SCの中。
核のスーパーマーケットに連なる位置に店があり、旬の野菜、果物を核スーパーマーケットとひと味違う品揃えでお客様の支持を得ています。

従業員5人は何年振りで、この春、新人パートを入れて。
新人は高卒新人じゃなく、30代のアケミさん。
結婚したてで、以前、製造業の事務員をしていたそうです。
まだ小売店の仕事には慣れていません。


「店長さん、ウチのプライスカードは、黄色の用紙に赤文字で書いたのと、青文字で書いたのと、二通りありますがどう違うのですか?お客様に聞かれたのですが」と、アケミさん。

「それは~、昔からそうやって来ただけ。普通なんですよこれは」。
40代半ばの、店主の息子店長の説明です。
「前からやっていた。だから普通で当たり前」という前例主義の店長です。

黄色の用紙に、赤文字や青文字で書く。色に深い意味はなく、単にその時、その色のマジックインクがあったから、ですか。
ぜひ、次例の様に意味を持たせて販売員に教えておいて欲しいモノ。
お客様は自分のサイフに響くことですから、単なるプライスカードでも真剣に見ているのです。

・黄色の用紙は「安さ、お値打ちさをアピールしています」。
・赤文字商品は「“本日の特別”お値打ち品」。
・青文字商品は「“いつもこの価格”のお値打ち品」。

こう説明すればお客様も一応、納得されます。
販売員育成にもいいはずです。

この様に、プライスカード一つでも、お客様に役立つ様に作成ルールを決めておき、キチンと作る。
これが育成・訓練の基本なのです。

【人の育成・訓練に大事なポイント】
① 店の「考え方とやり方を教えておくこと」。先ず記憶させる。育成の基本。
② 更に店の目的に合う様に「基本的やり方の枠ハメをする」。例えると「目を閉じていても出来るくらい」に鍛えておく。これが枠ハメ訓練なのです。

■お客様の立場に立って応対。「お客様の立場…」簡単な様で簡単じゃない立場。しかし、そこに販売員の存在意義があります。

ある日の店頭で~。

「この甘夏、美味しいですか?」とお客。
「どうですかね。私、これ、食べていないので……」と正直なアケミさん。
「え~。頼りない人やね。分かる人呼んで!」とお客。

しかし、お客様は真剣なんですよ、甘夏一つでも。
アケミさんは途惑っています。早く店の戦力になりたいのですが、甘夏以上に甘いです。

その日の帰り、店主が「アケミさん、どうですか仕事は?」と声をかけました。
「えー、何か訳が分からない毎日です。お客様に叱られ途惑っています。どうしたらいいのか……」
「そうですか。誰でも初めは分からんもんです。早く慣れる事ですね」

しかし、店主は、このままではアケミさんは辞めるかも知れないと察しました。

「アケミさん、早く帰りたいやろから、大事な事だけ言うから聞いて下さい」
「あんたは、仕事の出来る人と信じてウチに来て貰いました。まだ、商店でのお客様への接し方が分からん様ですが。あなたなら1ヶ月もすれば慣れます。私の経験上、それはよく分かりますよ。あなたなら大丈夫ですよ」
「ウチの家族でも、いつもお客様に叱られとります。こういう言い方は失礼やと思うけど、お客様は基本的には“気まま、我がまま”です。それを聞いて上げるのが私たちの仕事やと思います」
「今、あなたにお願いしたいこと。それは、あなたが買い物に行ったとき、あなたが“して欲しいことを、お客様の立場に立って、して上げて欲しい。と言うことです。お客様の立場に立つ。お願いは、これに尽きるんです、アケミさん。」
「商店経営に大事な格言があります。それは、“店はお客様のためにあり”という格言です。とりあえず今日は、この言葉を覚えておいて下さい。」

この日の帰り、アケミさんは少し元気が出ました。「辞めようかな」と思っていた気持ちが消えていました。


・その訳はアケミさんが少し自信を持ったことにあります。それは~。
①先ず一番は、「あなたは出来る、信頼している」と言う事を、ハッキリと言われたこと。こえで自信が湧いてきました。
②次に、「して欲しいことは、これとこれ」とキチンと言ってもらって、いま、何をしたらいいのか分かったこと。これで頭にあった暗雲が消えたのです。

・従業員育成というと難しそうですが、実際は単純です。それは~。
① 「お客様の立場に立って」という具体的な行動目標の提示。
② 「自分がお客様ならこうして欲しい、と思うことをして上げなさい」、という分かり易い行動目標の提示。この二つが育成に有効だったのですから。

・人の育成とは、その人のココロとカラダに行動の動機を与えてやること。
・従業員がやらないのではなく、やる気にさせていないと自覚することですね。


<シモナカ的用語解説>
 【育成・訓練】=育成とはその人の才能を引き出すこと。訓練とは目をつむっていても出来る様に修練すること
 【枠ハメとは】=例えば、NHKのお天気情報の女性たち。みんな似た言い方、動作です。これが「枠ハメ」している例です
 【お客様の立場に立つ】=お客様の身になって、というレベルではまだ販売側スタンス。例えば、食べて美味しくなかったスイカ。お客様は食べかけでも返品したい、謝罪して欲しい、と思っています。これに応えるなら、まあ、お客様の立場に立っていると言えるかな?
 【自信を持たせた】=「あなたは経験上、出来る人である、確信できます」と明言するなど。信頼が自信を生む
 【その人のココロとカラダに行動の動機を与えてやる】=モチベーションを心と体に与えること。スポーツのコーチや監督にこれが上手な人がいる。

筆者 下中ノボル (しもなかのぼる) プロフィール


*「店・企業は客の為にあり」が生涯の経営信条。(「商業界」理念)
*規模の大小を問わず企業生き残りの条件は「時流適応」と「顧客創造」。
*商業者に具体的アドバイスをする中小企業診断士。
*経営誌「商業界」、「2020AIM」などに執筆、他に著書多冊。
*中小企業経営大学校や各地商工会議所などの講師や専門委員を務める。
*専門課題は時流適応の商店経営戦略、マーケティング戦略など。

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