第12回 商いは結局、個の力が大事

商いは結局、個の力が大事
君が決めずして誰が決めるのか
~チームワーク一番の言葉に他人依存のスキが無いか?~
【1】 世界レベルで生き抜くことの厳しさ。サッカーの長友選手の言葉に感じます。
一方、野球選手の言葉より、サッカー選手の言葉が多く引用されることに、時代の変化を感じます。

「成功は人の表面を飾り、失敗は人の内面を豊にする」
と祖母に教わりました。失敗を恐れずに頑張ります。

サッカーの長友選手がTVに出演したとき、このように言いました。

商いに、その精神を学びたいものです。失敗から多くのお客様の心が読み取れると思うからです。

かつて長友選手がインテルへの入団会見時に「世界一のサイドバックになる!」と宣言しました。
「えっ!?」と思った人が多かったのじゃないでしょうか。
筆者もその「えっ!?」と思った一人です。
ふつう海外の選手は「世界のベスト5に入れる様に頑張ります」などと、やや遠慮気味に言うらしいのですが、彼はあえて一番になる、と宣言したのです。
その言葉によるリスクを覚悟の上で言ったようです。

この会見時から彼のサッカーは始まっていたのです。
初めから、自らにプレッシャーを掛けて勝負の世界に入っていったのです。
覚悟をもって臨み、いまスピードのあるサイドバックとして世界レベルで活躍しています。

「えー、僕はそんな宣言は出来ません。いや、まず覚悟がありませんよ。ウチみたいな小さなスーパーでは、そんな覚悟も宣言も要らないと思いますから…」。
長友選手の話をしましたら、あるスーパーの中堅社員はそう言いました。
申し訳ないけど、「そう始めから弱気にならずに、それなりの気迫と覚悟がほしいな」、と思いました。

「商いやビジネス」と「スポーツ」の違いはあっても、一旦、戦いの場に立った以上、その企業規模や立ち位置に応じた気迫と覚悟がいるんじゃないかと思うのです。
勝つ気のない人は勝てない。これは昔も今も変わらない鉄則です。

「勝つ気で臨みます」。先日、ブラジルでサッカーをするために遠征した本田選手、長友選手、香川選手達は口を揃えて言いました。
結果はどうあれ、そんな気構えで臨む選手がヨーロッパの強いチームで活躍しているワケです。

そう言わない選手は世界の一流の舞台に立てないよ、とある方が言っていました。
「思い」「念(おも)い」の差が「結果の差」になって出るのです。

【2】 油断して話すタクシー内の会話。そこに商店・企業の栄華盛衰の情報がある。タクシー運転手さんから見た、県内の人気店
情報。お客が来る、来ない、そのワケが見えます。


「今、飲食店で景気の良さそうな店はどこですか?」 
福井県内のいい客筋を持っていると評判の「Fタクシー会社」の運転手さんに聞きました。

福井県内、各市町の飲食店、商店を見ても栄枯盛衰が顕著です。
「店はお客様のためにあり」という基本信条を持ち続ける企業、「思い・念(おも)い」のぶれない企業が、結局、安定した経営を続けています。
思いつき経営、気分経営、単純なアイデア経営、こんな経営はいつの間にか消えて行くようです。

生き残るための経営理念、経営哲学では
「店はお客様のためにあり」
という哲理を残された「商業界」誌の創始者・倉本長治先生に始まります。
お客様の「利益」を先に考える「利他」の精神が繁盛の基本なのです。

タクシーの運転手さんの話に戻ります。
「どこが繁盛していると思うか、ですか?
フランス料理の“Jレストラン”とか“料亭S”なんかが繁盛していますね。お客様をよくお送りしますよ」。
「値段ですか、いま言った店は、話では1人1万円はするようですよ。料理は美味しいし、量も少なめだったので良かった、と言う話です。私なんか量は多い方が良いですけどね。カネ回りのいい人は羨ましいでです」。
「回転すしさんへ行ってくれ、といわれるお客様ですか?いらっしゃらないですね。私のお客様では…」。
「勤めの方で飲酒後、タクシーで市外に帰るお客様ですか?少ないですね。3000円以上タクシー代がいるときは、殆どのお客様はビジネスホテル泊まりですね。飲酒客を安く泊めるシステムが有るから、です。これには勝てません…」。
「アベノミクスの影響ですか?いい影響を受けていそうなお客は、今のところ、余り見かけませんが、中にはそれらしき方も見かけます。でもまあ、マスコミ報道が先行しているんじゃ無いですか?」

◎いわゆる大衆層をお得意にしている「Mタクシー会社」の運転手さんに聞きました。
「多いのは、高齢者が病院に行くときのご利用が多いです」
「家族でファミレスに行かれても、誰かがアルコール類を飲まずに運転手になっていますね。仲間同士の飲食でも同じです。誰かが運転して帰るようですよ」

「タクシーで飲食店から自宅に帰るのは、市内に帰る1人客が多いです。酔っぱらっているはずなのに、メーターが上がらないように近道の道順の指示をする方も結構ありますよ」
「回転すしやうどんチェーンに行くお客様は、先ずタクシーをご利用になりませんね」
「スーパー行きにご利用の高齢者は結構あります。特に先日までは撤退したスーパーの影響で、買い物にご利用頂くお客様がありました。高齢者には割引会員システムでサービスしています」。

「アベノミクスによる影響?
全くお呼びじゃありません。どこが景気がいいんですかね。マスコミ報道も都会中心の情報ですよね。本当ですかね」

「景気の良い飲食店ですか。お客様同士の車内での会話や、私どもに話されことでは、回転すしの“SU”などは評判がいいですね。他では地元のそば屋や居酒屋などに好評な店が幾つかあります」

「車内で話される、お客様の店選びの決め手は、
①美味しさ、②お値打ち、③接遇サービスの良さ、の3点が多い様です」
この“お値打ち感”が大事な様で、ある家具チェーンのCMにあるように
「♪お値段以上!」が大事な様です。

「今のお客様はお値打ちかどうか、よく知っていますよ。聞くところでは、あるレストランは料理の値段は安いですが応対サービスが悪い。更に店舗設備も。サービスも設備も商品のうちなのに、とお客様は怒っていました」

「回転すしの“SU”はネタがいいし、お茶も美味しいと言っています。お茶やガリなど、不味い店が、結構有りますからね」

耳学問と世間は言いますが、実地に経験しているタクシーの運転手さんは、ちょっとした評論家です。

お客様の本音、いわゆる“生の声”を聞いているのですから、これは参考になるはずです。

ここで「お値打ち」を公式風に表現しますと~。
 A:“売りもの”の価値 > 価格  これがお値打ちの公式
 B:“売りもの”の価値 < 価格  高いと思う公式
 C:“売りもの”の価値 = 価格  まずまずの公式 

この公式で分かるように、
「価値 > 価格」の店は繁盛し、
「価値 = 価格」の店が何とか横ばいで、
「価値 < 価格」の店がダメになる、と言う推定です。

ここで、少し見解を述べます。
「価値と価格」の関係は厳しいですが、一面単純でもあります。
公式が意味することを理解し、その通りの商いをすればいいのです。

ただし、「売りものの価値」は商品そのものの物理的価値の他に、心理的価値や情緒的価値も含まれますから、充分、注意が要ります。

世の中が、どこかの国のように、貧困状態や饑餓状態なら、もの中心の価値判断かも知れませんが、今日では、「気分」「イメージ」「情緒」が大きく関係するのではないでしょうか。

◎「従業員一同、心よりお待ちしていません
スーパーの、やさい、果物の陳列では配色が工夫されています。
赤や黄色のパプリカなどがグリーン一色の葉物野菜の陳列にアクセントに生かされています。

ファッション店でも売れ筋一色の陳列にしますと、色の偏りでお客様の関心を惹かない、というマイナスがあるので、色んな色を混ぜる事が大事といいます。
こうしたカラーコントロールも商品価値アップの一端を担っています。
お客様にとっては、POPも販売員の応対サービスも商品価値の一部なのです。

ある店で経験した応対について~。
安売りの目玉商品について質問しました。
丁寧で基本に添った応対なのですが、心が伝わりません。
「こんな安物を買うのにあれこれ聞くことは無いでしょう!」といった感じの応対です。

親切心が一向に感じられません。
チラシに書いてあった「従業員一同こころよりお待ちしています」がウソなんです。
「従業員一同、こころ無く、お待ち申していません!」 そんな応対でした。

【3】アベノミクスの裏の商業事情。
「高いものが売れる」という情報の裏に「280円牛丼でマックが息を吹き返す」という厳しい現実もあります。

県内大型店(百貨店とスーパー)の売上げは、最近の近畿経産局の発表(3月の売上げ額)は前年同月比ではマイナス2,2%の58億6000万円でした。
1月の売上げは、昨対がとんとんでした。しかし、ここ2ヶ月は昨対を割り込んでいます。
「好調!アベノミクス」とは行かないようです。

ランチは3000円のバイキング。ディナーは10、000円という世界もあれば、牛丼並盛り一杯280円という現実があるのが、今の日本です。

吉野家は今年1~3月までの売上げは昨年対比マイナス3~5%でした。
4月中旬に牛丼並盛り380円を280円にしてから4月が約4%アップ、5月が25%アップとなっている様です。

吉野家は単価を下げましたから、客単価も10%以上下がったようですが夏場向きの「うな丼」は30円値上げして680円に。
これで収支のバランスを取る算段のようですが、「捕らぬウナギの皮算用」にならないことを祈りたい?ですね。

筆者の友人がよく行く「すき家」は、5月は既存店で8,8%の売上げ減。
21ヵ月連続のマイナスらしく残念。客数が8,6%減ったようです。

お客様は値下げに慣れてしまっていて、余り反応しなくなったようだ、と関係者は述べています。
為替レートの関係もあり材料の値上がりが進む中で、牛丼チェーンは「いかに消耗戦に耐えられるか」が課題と見られています。

ハンバーガーの「マック」もこの1~3月は既存店の不振が響き、55%の減益でした。
これが5月には、わずか1%ではありますが、前年同月比売上げを上回り、14ヶ月ぶりのプラス転換となっています。

理由は、100円台の商品を増やしたほか、100円バーガーを120円に、120円のチーズバーガーを150円にするなどの「価格改定という値上げ」をしたからと見られます。
また200円前後だったフライドポテトを150円に下げて買いやすくしたのも効果があったと言います。

筆者も知人もマックの「100円のZEROコーラ」や「100円のソフトクリーム」の愛用者です。ちょっと一服、に便利です。
しかし、マックも牛丼チェーンやコンビニとの競争が厳しい現状が続いていますから大変ですね。

一方、日経新聞社の調査によりますと、飲食店よりウチで酒を飲む人が増えているようです。
1年前と較べると
・飲食店で飲むのを減らした人が34%、
・増やした人は13%
の様です。

今年1~3月の総務省家計調査による「飲酒代」は前年同期比2,9%減です。
「家飲み」データはありませんが先の家計調査によれば「酒類購入」は0,6%増です。
これを一応、「家飲み」とみて業界では飲食店のマイナスと併せて推測し、
「ソト飲みからウチ飲みへ」すなわち、「飲食店飲みから家飲み」に変わった、と見ているのです。

理由としては、
「余りカネがかからない」
「くつろげる」
「家族と一緒にすごせる」
となっています。

過去の酒飲み哲学から見れば「なっとらん」状況ですが、時代が変わったのですよね。
こう言っている筆者も「時代遅れ」の歌詞の中に追いやれそうです。
ともかく「カネがかからない」という当たり前のワケ、切ないですねぇ。

これが「高級品が売れる」と好況を伝える「アベノミクスの裏側」の一面です。週刊誌では「アホノミクス」と皮肉っています。
「男はつらいよ」そして、「庶民もつらいよ」です。

【4】結局は「個」の商いが勝負を決める。チームワークはもちろん大事やが、お客様の決心を促すのは1人の営業担当の対応次第や。
但し商いの失敗でお客様を失う危険性は店中の全員がもっている。油断するな!

ここでも、サッカー選手のコメントを引用します。
先のワールドカップ・アジア予選で出場を決めた後の記者会見で。
多くの選手が勝利の喜びを語っていた中で、
本田選手は『結局はシンプルに言えば個だと思います』と、言いました。
そして、「最後は個の力で試合が決することがほとんどなので」と。

同様に、中元の商いでも、途中まではチームの力が働きます。
しかし、最後は「個の力」です。店頭販売はもちろんですが、外商では完全に「個の力」です。

お客様が今決めて欲しいと思っている条件を、「店に帰って相談して来ます」では売れまへん!
でも、結構、これがあるのです。

知人が、最近、取引先の担当者を変えてもらった事例があります。
いつも出入りしている事務用品屋ですが、担当の女性がいわゆる“スロー”なのです。
スローも、のどかでいいんですが、毎度となりますと、いささか問題あり、です。

ミスが多く、やり直し、出直しは度々です。
「注文するから、すぐ来て欲しい!」といっても「どこそこに、行かねばならないので、行けない」というのです。

よく聞いて見ると、見込み客のウチに訪問するらしいのです。
「新規開拓も大事やろうが、いま、注文するというお客の依頼には代わりの人を寄越しなさいよ。後回しにするのは我慢できないよ」と愚痴っても、単にお詫びばかり。

「一生懸命は分かるが、このままでは本人の為にもならない」と意を決して、その店に申し入れ知人は担当者を変えて貰っています。
「打てば響く、言う感じですね」と知人は新しい営業担当者を評価していますが、今のところは、そう言うことです。

あの担当者は自分の「個の力」「個の営業力」をレベルアップしなければ、全体の破綻を招くと思いますが、今日では厳しく教えますと「パワハラ」で訴えられるので難しい時代です。

チームワークは大事ですが、最後は「個の力」が決め手。
本田選手のこの言葉にヒントを得た経営者が多いのではないでしょうか。

【5】北陸の中元商戦。本当に高価なものが売れるか、結果はいかに?
マスコミ報道は、売り手の「期待」であって実態とは限らない。

北陸3県の中元商戦はスタートしましたが、売れ行きはいかが?
売れ行きは、ぼつぼつだが、高価な品は期待ほどではない様子。法人はコスト削減指向が強く、その上に参議院選挙も絡んで楽じゃないと聞きます。

法人需要が難しいから、個人需要で何とか予算確保したいようですが~。

店頭での恒例の出陣式など、新聞やTVで報道されるあの変わり映えしない様子そのままに、品揃えも古くさい状態が続いています。

どの店を覗いてみても、地元の商品が多いです。当たり前かも知れませんが誰に贈らせようと言うのやろか。福井の人に福井の特産品で喜ばれるやろうか。

県外の人や、県外にいる福井出身者に贈るなら、まあ、いいが、県内の人に福井特産でもあるまい、と思いますが。
とにかく、毎年変わらない品揃えですねえ。

貰う方も気ままな今の時代。欲しいものは何でも買えるギフトカードでしょう。
例えば、調味料でも「我が家好み」があって一流ブランドでも好まれるとは限りません。

お茶、コーヒー、洗剤、ビール、酒、などは好みのブランド以外は申し訳ないが、有りがた迷惑?に近いですね。

できればギフトカードや品選びの出来るカタログ商品が好まれると思います。商店側は、もう少し時代のニーズ、お客様の好みを、研究すべきじゃないでしょうか。

また、ワンパターンな中元セール出陣式などは止める企業が出て欲しいものですね。
古くさいですよ。出陣式、品揃え、売り方、一考の余地あり、と思うのですが。

ピーク時期の設定は、毎年、7月の第2週が中元商戦のピークになりますが、ことしは参議院選挙の関係でかなりピークが前倒しになりそう、ですね。

ともかく現状はそれとして、もう少し「市場ニーズ」を研究した贈答用品戦略を考えて欲しいと思います。

相撲協会、柔道界のマスコミ報道を見て、贈答業界も刷新が必要と思います。
今のやり方は何十年前と余り変わっていない、ことに気づいて欲しいですね。

筆者 下中ノボル (しもなかのぼる) プロフィール


*「店・企業は客の為にあり」が生涯の経営信条。(「商業界」理念)
*規模の大小を問わず企業生き残りの条件は「時流適応」と「顧客創造」。
*商業者に具体的アドバイスをする中小企業診断士。
*経営誌「商業界」、「2020AIM」などに執筆、他に著書多冊。
*中小企業経営大学校や各地商工会議所などの講師や専門委員を務める。
*専門課題は時流適応の商店経営戦略、マーケティング戦略など。

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