第6回 現場スタッフから革新を起こせ

現場スタッフから革新を起こせ
「一期一会」「ネット商法」「接客重視」これに尽きる今年の商い。
~世の中どこも不況やから「ウチも仕方がない」でいい訳がない~


■業種、業際を越えた競争が始まっています。全国企業と地域企業の戦いが始まっています。
お客の「お客様感覚」は既に都会並みになっていのに、売り手だけが地方並み?と言うことは許されません。
むしろ地方は都会以上のきめ細かさが求められているのです。
視点を変えますと、アジアに出店し成功している日本企業は、日本的なきめ細かさで成功していると言います。
特に商いにおいては現場・店頭のサービスが全てを決します。
卓越した企業理念も経営方針も店頭での些細なミス、応対で全てが瓦解してしまうのです。現場スタッフの革新が大事なのです!

今年の初売りに”消費回復の芽”。ネット通販に注目を!

■初売りはよく売れた。日並びも良かった。売り方も上手だった。
今年の初売りは「まずまずの出足」だった、と言われています。
専門店も大型店も6日の日曜日までは日並びが良かったこともあって、昨年対比5~10%増の売上げをした様です。
百貨店では「そごう・西武」が今年は元旦から商いをしました。
これもある面で小売業界のインパクトになった筈です。

量販大手のイオンも衣料・食品共に伸びて昨年対比5%増の売上げのようです。
家電はいずこも厳しい様ですが、白物家電が売れて10%近くアップした店もあるようです。
今年は1月4日の金曜日を休業すると6日間続く休みになり、来店客が増えた様です。
しかし、そのまま購買客にはならなかった、という見方もあります。
ともあれ、お客様が街に出た、と言うことは商業者にとって喜ばしい初売りだったと言えるようです。

■ネット通販が好調、消費支出の5%に達す。
一方ではネット通販の好調が伝えられます。
楽天などは昨年対比10%アップという声も聞こえます。
また、マクロな数字では、昨年末のネット通販は個人消費の5%を占めたという情報があります。

具体的な数字で言いますと12月で1世帯平均消費支出(総理府統計)が27~28万円で、その5%すなわち1世帯当たり13,000円~14,000円がネット通販への支出と言えるようです。
費目別に見ますと、商いの具体策が浮かんでくるはずです。
ネット通販の数字が大きいな、と言っているより具体的に狙うポイントを考えて見ることです。

アクセス客数、滞在時間、購買率、来店プロセスなど実店舗以上に詳細に分かるのがネット通販の面白味です。
北陸の片田舎にネット通販で健闘している小売店が何軒かあります。
あんな商売じゃムリじゃないか、と思っている店が結構売っているのです。
もちろん、常に改革をし続けなければ生き残れないようですが。しかし、これはどんな商いでも同じですよね。

■田舎でもネット通販で生き残る。ネット通販の強み。
家族と従業員の何人かで、年商2~3億円から10億円余。
この数字は大きいですか、小さいですか。
本稿の提供企業であるデータシステム社に聞いてみて下さい。

ネット通販の魅力は、厳しい消費支出の中で、価格や機能を比較したり吟味しやすいのが最大ポイントだ、という消費者がいます。なる程と思います。
関西・某市の商業者の集まりでこの話をしましたら、皆さん関心を持って聞いてくれました。
ただ、いつもどちらかと言えばマイナス発想のご意見を言われる年配の社長さんは、「先生、うちもネット通販をしていますが、なかなか売れまへんで」と言うことでした。
「それは、あきまへんですね」と言うほか、ありませんでした。

■スマホでネット通販急増。
経産省の調査ではスマホの普及でネット通販の比率が大幅にアップしたと言います。
ネット通販が消費全体に占める比率が、
・2007年に1%台だったのが
・2012年12月には5%近くになった、ということです。

そう言えば、スマホやタブレット(多機能携帯端末)などの普及でパソコン嫌いだった人がネット通販に興味を持ち始めています。

■アメリカではネット通販が40%。
ネット通販の先進国、アメリカでは年末商戦全体に占めるネット通販の売上げは40%と言われています。
日本の何年か先を行くと言うアメリカ商業から、かすかに先が見えてきます。
1950年頃から全国各地の商業者と、足繁くアメリカ商業を見て来た筆者ですが、その機会に幾つもの業種・業態の盛衰を見てきました。

そして、「日本にはまだ早い。まして福井や他の地方都市では、まだまだ」と言っているウチに、その商いに火が付いた方を何人も見てきました。

■まだまだと言っている中に手遅れ、いう現実。
こうした経験から、「まだまだ」は「もう既に」と置き換えた方が良いのでは、と思っています。
アメリカはもう古い。見習うことは無い、という人が居ますが他人の言葉は安易に信じない方が良いと思います。

革新のスピードの速い業界で、生き残るための「秘策」はありません。
あるとすれば、改革の意欲と覚悟があれば何とかなるのでは、というのが筆者の思いです。
先のマイナス発想の社長の会社は、現在のリアル商売で可なりの売上げをしている「成功例のために」、なかなか、新業態転換は出来ないと思います。
あの企業の太陽の位置は、今は午後3時過ぎだと思います。
日が暮れる前に何かを考えて欲しいと思います。

喧嘩の元は?「銘菓店より普通のお菓子屋でありたい」
という北海道の有名菓子チェーンのチラシ広告でした

■有名菓子チェーンのチラシを見て大喧嘩。
正月早々、北陸の知人の銘菓店(4支店経営)で社員同士の大げんかがありました。それは、あるチラシが発火点でした。
きっかけになった北海道の有名菓子チェーンのチラシにこう書かれていました。
「当店は北海道の有名なお土産屋かも知れませんが、しかし、ウチは贈答用のお菓子ばかりを作っている訳ではありません。
 創業以来、地元のお客様に喜んで戴ける様なお菓子作りを続けて来ました。
 私どもが目指すのは毎日のおやつをひとつ、ふたつ買いに来て戴ける様なおやつ屋なのです」
「もっと身近なおやつ屋になりたい。そう考えて通信販売で売る”お取り寄せセット”をご用意しました」

「なる程」とも「なんと欲張りな」とも思える広告です。
このチラシ広告を見た銘菓店の若手販売員が、
「僕もこの考えに賛成や。しかし、そうは言ってもこのチラシの商品価格はおやつにしては高い。
本当は”単に売りたい”だけやないか。北陸の一般家庭の一ヶ月当たりのおやつ代はもっと少ない筈や。
ウチは売上げの殆どが贈答用の品やけど、もっと日常的なお菓子を売る”おかし屋”を目指すべきやないか」
こう言ったために、銘菓を作り育ててきた社長を、わがオヤジと思っている店長が
「この店を作ってきた社長の気持ちが分からんのか!」
と、烈火の形相で怒ったのです。

■専門店が勝ち、一般店が負ける、というほど単純ではない
現象的に見れば、当たり前の喧嘩です。どちらも我が店の発展を願っての言い分です。
まあ、日々の商いを見れば、贈答用を売る銘菓店と、日々のおやつとして売るお菓子屋は商品も価格も、その存在意義もかなり違うのですから喧嘩しても意味が無いのですが。

お客視点で言えば、贈答用にお菓子を買う時はそれなりに買う単価は高いですが、購入頻度は低いです。
専門的な商いは市場的にも自店的にも、売上げ数字は厳しいモノがあります。

一方、購買頻度の多いおやつ菓子を買う人は、頻度は高いでしょうが単価は当然低いです。
また買う場所は、まあ、スーパー利用が多いのでは。
ですから、専門店がスーパーと同じステージで商いをするのは、難しい面があります。
購入目的が違えば売り方も買い方も大きく変わりますから。

■北海道の銘菓チェーンのジレンマも見えてくる
北陸の菓子店・販売員が言います。
「北海道の銘菓チェーンの商品は、日々のおやつとして買うには高すぎる。このチラシの文案は広告屋が書いたモノかも知れん。
ともかく、北陸でこの高価な菓子を日々のおやつとして食べる人がどれだけ居ると思うんや。
また、本当に地元のお客様に売りたいのならこんな北陸くんだりまでチラシを撒くな、と言いたいわ!」。
販売員の意見には実感があります。

あなたは、どちらの考え方、商い方を選びますか?
これは、専門的商法と普通商法の違いでもあります。
人によっては「質的商法」と「価格商法」と言うかも知れません。
もし「質」に違いを求めるなら、それは「価格」と「サービス」の差でしょうか。
また、「近隣商法」と「広域商法」の問題でもあります。
若手販売員が言う様に、チラシ通りの考えがあるなら、本当に地元の人にもっと食べて欲しいのなら、商品にも売り方にも別の方法がある様に思えます。

売り方としては、陳列や展示、それにPOP広告でお客のセルフ購買を狙う方法と、人間が個客?に応対するサービス方法があります。
この銘菓チェーンはどちらを狙っているのでしょうか。
「リーズナブル価格で好きな商品が欲しいお客様」は「自由に選んで買いたい」のです。
これが逆に「買わせられるために選ぶ」となればお客様にとっては迷惑です。

新年早々の社内の喧嘩はひとまず答えが出ないまま終わりました。
今年は、経営者も社員も、大きな宿題を抱える年になりそうです。

お客様が少ない、というグチは最低最悪

■お客が少ないと言うな。柔軟対応が決め手。
レディス・ショップの例です。
田舎の人口3万人余の街で商いをしていた店が、「こんな人口の少ないところで商いをしていてもラチがあかん」、と京都府下の人口8万人弱の街に引っ越しました。

商いは立地産業と言いますが、ときには立地を変える必要があります。
商いは、市場対応ビジネスでもあります。
京都府下に移住したこの店は、かねてから念願の有名メーカー・ワールドなど一流メーカーのトップブランド商品を扱いました。
1点1万円から10数万円する商品ばかりで、瞬く間にその街のトップ・ファッション店になりました。
今はピーク時から言えば売上げは下げていますがそれでも、街一番のファッション店です。
有名メーカーが今も取引をしたがるファッション店です。

少子高齢化で商売環境が悪いからアカンと言う人も居ます。
しかし、「少子」とか「高齢化」とか、そういう与えられた環境でビジネスをすることが「商いの本質」なのです。
昨年のベストセラー本「置かれた場所で咲きなさい」(ノートルダム清心学園理事長・渡辺和子著)にはタイトルのごとく、
「どんなところに置かれても花を咲かせる心を持ち続けましょう」と書かれています。

「ウチの主力客は60~70才以上の方です」とこの店では言います。
商いは「市場対応」が基本です。
例えば、冬の寒さを無くすることは商業者にはできませんが、防寒とおしゃれが交錯するファッション商品を売ることが出来れば可能です。
「寒いからどうすればお客様が喜ぶか」を考えるのが商業者の役割なのですから。

一般論を言えば、暖房器具、防寒着、防寒靴、暖まる食べ物、などなど寒さに対応する商品やサービスを提供すればお客様は喜んでくれます。

高齢化が困る、というのは売り手の勝手です。
商いは市場対応が使命ですから、高齢客に合うビジネスをすれば良いのです。
若者がいい、ヤングが良い、というのは過去の成功例にこだわっている証拠です。
後継者が若者相手の商いをするというなら、それはそれで良いでしょう。
柔軟対応。
これが決め手です。

■セブン&アイ。鈴木会長が言う「接客」重要説。
「消費が本格回復するには時間がかかる。接客と新商品開発に力を注ぐことが不可欠」と、鈴木会長は年頭挨拶で言いました。
筆者の知人にセブン・イレブンのおかずが旨い、セブンのプレミアムPB商品が好きという人が居ます。
筆者もなぜかセブンのお菓子や茶葉など、残念ながら?美味しいと思います。

緒方知行さんという知人は鈴木敏文会長の熱心な支持者で、緒方さんが執筆する記事には度々鈴木会長の記事が載ります。
そう言う訳で、鈴木会長が「接客」「新商品開発」が重要と言われる以上、筆者もこれに深い関心を持つ訳です。

アメリカの大手専門店で聞いた話では、お客様の店離れ理由の80%は、「お客様への無関心」である、と言うことでした。
要は接遇時の無関心が原因なのです。

「お客様なくして商い無し」。
ともかく「お客様第一」「接客第一」で無くてはならないのです。

■「一期一会」。運・不運、全ては人が運んでくる。
筆者が以前から大事にしている言葉に、
「いい話も悪い話も、すべて人が運んでくる」
と言うのがあります。
どなたに教わったのか覚えていません。
ただ、今日まで経験したことは、この言葉は正しい、と言うことです。
日本中の方から、色んなご相談、ご依頼を戴きました。
誰からか分からない仕事は一個もありません。
すべて、どなたかを通じてやって来ました。

聞きたくないこと、
不都合なことも、
全て、どなたかを通じてやって来ました。

元をたどれば自分の接客・接遇の結果がどなたかを通じて返って来ていたのです。
いい接遇には良い返事が返って来、
良くない接遇には、悪い返事が返って来ていたと思います。

換言すれば、「一期一会」の結果であった、と思います。
「一期一会」の意味は、「茶会に臨む際は、その機会を一生に一度のものと心得て、主客ともに互いに誠意を尽くせ」といった利休の茶会の心得から来ているそうです。
「一期一会」について、私はベストではありませんでした。

鈴木会長の言われる「接客が重要」とは「一期一会」に本気で取り組め、ということだと思います。
全てのスタッフがこの「一期一会」の心得でお客様に接したら、その企業は必ずお客様を増やすと思います。
お客様が増えると言うことは、企業・店が繁盛すると言うことです。
基本の基本です。
単純な原理原則です。

「接客重要」
「一期一会」
繁盛はこれに尽きると思います。

筆者 下中ノボル (しもなかのぼる) プロフィール


*「店・企業は客の為にあり」が生涯の経営信条。(「商業界」理念)
*規模の大小を問わず企業生き残りの条件は「時流適応」と「顧客創造」。
*商業者に具体的アドバイスをする中小企業診断士。
*経営誌「商業界」、「2020AIM」などに執筆、他に著書多冊。
*中小企業経営大学校や各地商工会議所などの講師や専門委員を務める。
*専門課題は時流適応の商店経営戦略、マーケティング戦略など。

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